キッチンカーで船橋市内を中心にマンデリン一筋のハイクオリティーコーヒーを提供している移動販売珈琲 秋田屋さん。各種イベント出店や企業・施設などとの取引先を着実に増やしていくなど、じわじわと注目を集めています。
本記事では、移動販売珈琲 秋田屋の店主である秋田谷剛さんに現在の活動に至るまでのSTORYを伺いました。
Profile
高校卒業後アメリカへ音楽留学をし、帰国後はアルバイトと音楽活動に没頭。2010年に某バンドのドラマーとしてメジャーデビュー。2011年にはプロバスケットチーム千葉ジェッツのドラムパフォーマーとして活動しながら会社員として働くも鬱病を発症したことで2019年に退職。1年半の療養・休養を経て、2021年6月「自家焙煎 移動販売珈琲 秋田屋」を開業し、現在に至る。
陽の光が当たらない部屋では未来さえも描けない
▲常にズボンのポケットに忍ばせているというドラムセットのチューニングに使用するチューニングキー。珈琲屋さんがなぜ・・・?
日の出から日没まで陽の光が届かない部屋でPCに向かい、無理難題に対応し続ける過酷な日々を送り続けた会社員時代・・・。
顧客と対面することがない職種だったため「誰のために何のためにこの仕事をやっているのだろうか」と常に不安を抱えていたと秋田谷さんは当時を振り返ります。
「もうダメだ。自分が壊れてしまう・・・」
過酷な業務量に加え、上手く上司と意思の疎通もできないなかで、心は徐々に疲弊していき、鬱病を発症してしまったことで退職を余儀なくされました。
この当時は将来像を描く余裕なんてありませんでした。
そんな時に思い出したのが妻とよく語り合っていた二人の将来の話です。
夢の前倒しで始めた移動販売珈琲という選択
鬱病を発症し療養を続けるなかで少しづつではありますが、将来に目を向けるまでに心が回復していった秋田谷さん。
その当時の選択肢として頭のなかで描いていた未来は3つあったといいます。
・①前職に戻る
・②新しい職を探す
・③開業する
①と②は遅かれ早かれ鬱病が再発することを恐れ、消去法で「③開業する」を選択することにしましたが、「どんなビジネスで開業するか?」についてのビジョンは全くなかったそう。
前職が介護士の嫁と「デイサービス」的なサービスで開業することも検討しましたが、嫁との喧嘩が増えたので白紙にしました(笑)
未来が定まらずに喧嘩が増えていた時にふいに思い出したのが、奥様と二人でよく語り合っていた「老後は小さな喫茶店でも開いて気楽に過ごしたいよね」という遠い未来の夢の話でした。
「これをいま実現できないかな?」と脳裏をよぎったといいます。
しかし、時代はかつてない規模で世界を震撼させていたコロナ・パンデミックにより未曾有の危機に直面していた2020年。
いま喫茶店を開業するにはリスクが大きすぎる。
でもどうにかして二人の夢であるコーヒーで開業ができないだろうか・・・。
新型コロナウイルスの感染拡大にともない飲食店が窮地に立たされるなか、街でよく目にするようになったのがキッチンカーという営業スタイルでした。
「そうか!『待つ商売』ではなく『出向く商売』にすれば、このコロナ禍でも二人の夢が叶えられる」
喫茶店とは形態が異なるものの「キッチンカーで極上のコーヒーを提供する」という現在の種が出来上がったことで老後の二人の夢が前倒しで動きだしました。
元々コーヒー好きで繊細でグルメな味覚を持つ秋田谷さんは、独学で焙煎を習得し、知人から紹介してもらったコーヒーのプロにその味を試してもらったところ「これなら大丈夫!」というお墨付きをもらうことができ、自信をつけたことで開業を決意。
こうして「移動販売珈琲 秋田屋」を2021年に開業し、二人の未来が静かにゆっくりと走り始めました。
▲銀行から借金をして手に入れたキッチンカーを自らDIY。
▲インドネシア産のコーヒー豆「マンデリン」一筋にこだわり、生豆から選別し、焙煎後も雑味の原因となる欠点豆を選別でとことん取り除いた優良豆のみを使用するハイクオリティーコーヒーを提供。
▲車内に焙煎機を設置することで、挽きたての極上のコーヒーを提供するだけでなく極上の香りも届けたい想いを実現。
地元農家のムチャブリ?でビジネスがゆっくり右肩上がりに
創業して間もなくのこと。とある人物との出会いでチャンスを手にすることになりました。
その人物こそが、西船橋(千葉県)の小松菜農家「ひらの農園」代表の平野代一さんです。
平野さんといえば、地元では誰もが知る有名人。今となっては船橋の特産品になっている小松菜の認知度を拡大させつづけ、小松菜のブランディングだけにとどまることなく、地域の企業や飲食店とコラボをして様々な企画を成功させているレジェンド的な農家さんです。
そんな平野さんからある日こんなことを言われたそうです。
ウチの小松菜さぁパウダー化して販売してるんだけど、秋田屋さんとコラボして新商品作れないかな?いろんなとこで断られちゃってるんだけど・・・
こ、小松菜でコーヒー・・・ですか。
(この人ホンキなのか?)
やっぱり無理かなぁ・・・
(さぁどうする?秋田谷さん)
このムチャブリに応えられるかなぁ・・・。
いや応えるべきだっ!!
そして試行錯誤し何度も試作を重ねるなかで、小松菜パウダーとコーヒー豆からドリップしてガムシロップとレモン果汁を加えた「コマツナレモン」を完成させました。
「コマツナレモン」は移動販売珈琲 秋田屋の主力商品ではありませんが、「コマツナレモン」をきっかけにメディアでも数多く取り上げられるようになったことでその認知度が上がっていき、少しづつ出店先や取引先を拡大させることに繋がったと秋田谷さんは当時を振り返ります。
➖ 出店先の一例 ➖
▲スズキオート京葉 様(船橋市芝山)
▲ひらの農園 様(船橋市山野町)
出店先の一覧(※2024年1月時点)
・小松菜自販機向かい(船橋市山野町)
・ウィンズホーム(船橋市習志野台)
・洋食屋バル369(船橋市高根台)
・スズキオート京葉(船橋市芝山)
・共立習志野台病院(船橋市習志野台)
・山口病院(船橋市西船橋)
・新検見川駅からすぐの個人宅(花見川区南花園)
・さっちゃんのいちご園(八千代市島田台)※シーズン中のみ
・ふじはら酒専門店(船橋市南三咲)
・フナベジ(船橋市豊富町)
▼詳しいスケジュールは公式HPをチェック
背中で泣く女性とチューニングキー
少しずつ認知度が上がり、活動の場所が増えていくなかで、秋田谷さんには今でも忘れられない光景があるといいます。
それは、移動販売珈琲 秋田屋で購入した珈琲を飲み始めた直後に感激して泣き出してしまった女性の後ろ姿です。
(写真はイメージです)
彼女も日々ツライ毎日を送っているのかもしれない。そんな過酷な日々のなかでウチのコーヒーで感動してもらい、少しでも彼女の時間にほっとしたひとときを提供できているなら・・・オレはまだまだこれからも頑張ることができる。
そんな彼女に重ねてしまうのが、かつて鬱病で苦しんでいたかつての自分自身です。
あの頃は将来を描くことなんてできなかった。
その日を生き抜くことで精一杯だった。
しかし不良豆を取り除き選別して最高品質の豆を残すかのように、少しづつゆっくりと時間と手間をかけて行動し、多くの出会いを重ねていくなかで、妻と二人で未来を手繰り寄せることができた。
お客様や取引先の方々と触れ合うことで、すぐに乱れそうになる自分の心のチューニングをしてもらっているのかもしれない。
いつもズボンのポケットに入れて持ち歩いているというドラムセットのチューニングに使うチューニングキー。
そこには彼がいつでも感謝を忘れず、そして自身のチューニングが狂わないように持ち歩いているお守りという意味合いもあるのかもしれません。
長年持ち続けていたので、持っていないとソワソワしちゃうんです。
あの日突然泣き出してしまった女性のように、移動販売珈琲 秋田屋さんには店主である秋田谷 剛さんとの触れ合いを求めて、多くの方々が今日も足を運んでいます。
最近なぜか人生相談を受ける機会があります(笑)
僕の今までの経験がお役に立てるなら、こんなに嬉しいことはないですね。
そう。彼が提供しているのは極上のハイクオリティーコーヒーだけではなく、同時に極上の時間も提供しているのかもしれません。
最近、頑張りすぎちゃっている。
常に時間に追われていて辛い。
ちょっとリラックスする時間が欲しい。
そんな方は一度、移動販売珈琲 秋田屋さんで、ほっとしたひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか?
きっとアナタが住む街(もしくは職場)の近くで、コロコロとした可愛い目をした秋田谷 剛さんが極上のコーヒーとゆったりと流れる時間と共にアナタが来る日を待っているはずですから。
お店DATA
移動販売珈琲 秋田屋
インドネシアで栽培される希少なコーヒー豆「マンデリン」一筋にこだわったハイクオリティーコーヒーを提供している移動販売式の珈琲店。
生豆から選別し、焙煎後も選別し、雑味の原因となる欠点豆(マイナス要素のある豆)を極限まで取り除き、優良豆のみを使用した最高品質の珈琲を提供している。
デリバリー感覚でコーヒー1杯から呼ぶことができる「巡るカフェ」が好評。(ただし船橋市近郊に限る)
移動販売珈琲 秋田屋さんの詳細については公式HPをご確認ください。
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